どっちも立派なプレゼン

今回はプレゼンテーションの本を2冊紹介したいと思います。この2冊、まったく重要なポイントがまるで逆です。そして、どちらも卒論や学会・研究会での発表には向かないと思われるスタイルのプレゼンテーションについて書かれています。でも、プレゼンテーションをどうすればよいかを考える上では、どちらも重要だと思うのです。

まず1冊めは『プレゼンテーション Zen』。有名な本ですよね。

プレゼンテーションzen

プレゼンテーションzen

  • 作者: Garr Reynolds,ガー・レイノルズ,熊谷小百合
  • 出版社/メーカー: ピアソン桐原
  • 発売日: 2009/09/04
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
  • 購入: 51人 クリック: 927回
  • この商品を含むブログ (186件) を見る
従来のプレゼンテーションで使われるスライドを、いかにシンプルかつ印象的なものにするかというポイントに重点が置かれています。ページをパラパラとめくると、デザインのみを重視しているかのように思えますが、そうではなくて「スライドは発表者自身や話す内容を引き立てるものである」ということがこの本の思想のベースになっています。そのために、スライドに書く/描くものを、いかに省略して、いかに整理するか、まさに禅問答のように突き詰めるような本です。

2冊めは、ビジネスで使われるタイプのプレゼンに関する本といえばいいでしょうか。タイトル通り、エンジニアはどんなスライドを作るのが良いのかを、PowerPointでの操作のポイントと合わせて説明しています。

エンジニアのためのPowerPoint再入門講座 伝えたいことが確実に届く“硬派な資料”の作り方

エンジニアのためのPowerPoint再入門講座 伝えたいことが確実に届く“硬派な資料”の作り方

こちらで重視しているのは、サブタイトルにもなっている「硬派な資料」。つまり、ビジネスの場面で、スクリーン上で見せるだけではなく、会議で使う印刷した資料として使える、しっかりしたスライドを作成することにポイントを置いています。だから、スライドには伝えたい文章をしっかり書いておくし、文字の大きさは小さくてもよいし、無論最低限の図表もしっかり使って、スライドを読んでもらうことで大体のことは理解してもらえるような、プレゼンテーションを目指しています。

この2冊を、そのまんま授業やゼミで利用したりするのは、難しいでしょう。だって、卒業研究やら学会などでの発表で作るスライドは、どちらのスタイルでもなくって、あえていえば2冊の本で主張しているスタイルの中間にあたりますから。
でも、「プレゼンテーションとはこういうものだ」というのは一つだけじゃないですよね。目的やプレゼンをする場、対象となる人に合わせて、プレゼンテーション全体からスライドの作り方まで変えるべきものだと思うのです。大学の初年次教育での発表のしかたの説明では、このようなスライドのスタイルを紹介するのは難しいでしょう。個人的には知っておいて損はないと思うのですが。