プレゼンのための必読書

これまで、初年次教育の本を十冊近く読んでみましたが、この本に勝るプレゼンの解説をした本はありませんでした。本のタイトルには「理系のための」と書いてあるくらいなので、ところどころに理系(とくに化学)に関することが書かれていますが、人文系でも十分役に立つ本です。この本の序論に書かれていますが、「口頭科学発表」は単なるノウハウやコツの習得によってではなく、努力によって修得できる「専門技能」であることが、丁寧かつ必要十分なムダのない説明と具体的な事例によって示されています。

理系のための口頭発表術―聴衆を魅了する20の原則 (ブルーバックス)

理系のための口頭発表術―聴衆を魅了する20の原則 (ブルーバックス)

全体の構成としては、発表に向けた準備、発表する内容の構成やストーリーの展開の仕方、視覚素材(とくにパワーポイント)の使い方、話し方の技術の4つの章に分かれています。とはいえ、全体の約3分の2が、準備と発表内容の話です。ここからもわかりますが、発表で大事なのは、一番に準備、二番に内容とストーリーということでしょう。
また、各章の最後には重要ポイントがまとめられていて、準備は10の原則、内容やストーリーは4つの原則、視覚素材と話し方はそれぞれ3つずつの原則と、ここからも、準備が一番大事なことがわかります。
全部で20の原則がありますが、はっきりいえば、すべて大事な基本原則です。その中からあえていくつか取り上げるとすると、個人的には、次の5つです。

  • 「発表とは聴衆とのコミュニケーションが鍵になる」
  • 「だめを押せ」
  • 「時間オーバーは厳禁」
  • 「結論は簡潔に」
  • 「単純を心掛けよ」

大学1年生には、内容的にちょっと難しいかもしれませんが、大学3・4年生くらいには是非とも読んでから、卒業研究や学会発表に取り組んでいただきたいです。また、授業やセミナーなど、われわれ教員にとっても、気をつけるべき詳細なポイントも解説されていて、たまに読み返したくなる本です。