上から目線は駄目だけど、立場まで同じになっちゃうのも駄目

年度末最後に読んだ本は、「教える」ということについての本。藤沢晃治さんの「分かりやすい」シリーズの最新の本になります。これまで「伝える」ということについて書かれた著者が、「伝える」だけでは済まない「教える」ということについて考えた内容です。個人的には、これから「教える」立場になろうという方、ある程度「教える」ことに馴れちゃった方にお勧めしたいです。

人生のなかで、「教える」立場になったり「教える」役割を担うことが全くないということは、まずないんじゃないでしょうか。でも、うまく「伝える」のと違って、「教える」というのは相手(生徒や学生、後輩、部下、子どもなど)が教えた内容をできるようになったり意識を変える、相手に何かの変化をもたらすものだと思います。そう考えると、すごく難しそうに思えるわけですが、本書ではあっさりとこう書いています。

「自分には性格的に向いていない」という理由で、「教えることに自信が持てない人も多いようです。しかし、そもそも「教える」を「技術」と考えれば、生まれつきの性分がどうであれ誰でも習得可能で、よい先生になれるはずです。

最近「自分は教える立場には向いていなんじゃないか」という話をちょっと聞いたこともあって、この部分には考えさせられました。個人的には、多少性格の向き不向きはあると思いますが、「教える」というのは結局誰でもいつかは一度くらいややらなきゃいけないこと。それならば、「技術」ととらえて「教える」ことを考えるのは悪くないように思います。

本書には、教えるための「5つの心構え」と「8つの技術」が説明されています。心構えのひとつに「生徒をお客様だと思え」というのがあるのですが、個人的には、これは上から目線でなく生徒の立場に立って見てみなさい、ということではないかと思います。教えるということをしていると、どうしても「教える側の理屈」を優先して考えがちではないでしょうか。また、8つの技術では、インストラクショナル・デザイン(教授戦略)と同じような説明がされており、「目標を分解せよ」「反復と映像化で脳に刻み込め」は、自分の教え方の参考になりそうです。

「教える」ことが目標とする、知識や技能の定着を「脳にけもの道を刻み込む」というたとえは、大変面白い見方だと思います。伝えるだけでは刻み込むことはできない。刻み込むためには、「下地を作る」「印象深く」「繰り返して」「与えるのではなく引き出す」。これが本書の一番のポイントのように思います。