これだけ知ってればいいなんてことは本当はない

まだまだ統計分析の本を読んでいます。今回読んだのは、看護研究に取り組もうとしている看護師や研究の初心者を対象とした本です。現場の人たちが統計というツールを使って研究できるように、遭遇しやすい具体的な事例で構成されています。そして、本書の大きなポイントは、数式が面ではなく、グラフやその面積などの話を中心に統計学の解説をしていることです。「興味を持ちやすく」「わかりやすい」統計解析の本です。

統計解析なんかこわくない―データ整理から学会発表まで

統計解析なんかこわくない―データ整理から学会発表まで

例題は、確かに看護関係の事例がおおいですが、ロト6の当選数字の分布、デートに行くときの女性のハイヒールの高さ、BMI値をもとに理想の体重とダイエット経験の関係など、(どちらかといえば女性に)身近な事例も扱っています。そして看護関係のことがわからなくても、「こんな感じのデータは、こう扱えばいいんだ」ということが、理解しやすいと思います。

それぞれの事例では、そこで扱う解析の数式も登場しますが、それは、あとでExcelを使って身体で体験するために必要な解説という位置づけだと思います。事例では、Excelを使って具体的にどのような数式を組み立てればいいかがわかるように解説されています。それぞれの事例で作成したExcelのワークシートはデータを自分の扱っているものに変えれば、そのデータに関する分析ができるようになっています。

著者の方は、以前紹介した『マンガでわかるナースの統計学 -データの見方から説得力ある発表資料の作成まで-』の著者のひとりです。そちらの本も非常に良かったのですが、今回の本も非常に勉強になりました。本書では、相関や回帰、推定、多変量解析などは扱わず、検定の話がメインになっています。つまり、検定に関しては十分な説明が丁寧になされていると思います。グラフを使った検定のしくみの説明はなかなかおもしろかったです。また、データの内容や特徴にあわせて、どのような検定を使えばいいかというのが理解しやすいともいます。とくに「なんでもかんでもt検定でいいわけでない」という著者の主張が、統計による検定を勉強するものにとっては、非常にありがたかったです。