情報教育の危機的状況

先日の日曜日は、いつもの研究会で大阪へ。今回は、研究会のご意見番I先生の発表、というか意見を述べられました。一言で言えば、「未来に向けた人間作りには情報教育は不可欠だが、今危機的な状況にある」ということです。その問題を、「何を学ぶか」という教科教育の限界と「何のために学ぶか」という能力教育へのシフト、教育・受験・教員など各方面の問題点の指摘を通して、主張されました。今回は、情報教育関係で著名な、T先生も東京から参加され、活発な議論が展開されました。

個人的に大変共感したのは、「情報は、人と金を伴うものである」という話。そういう、情報の特徴を踏まえて、教員は将来の人材を育成するという自覚が必要であるとのことでした。個人的にも、以前の記事に書きましたが、デジタル放送や携帯電話や携帯プレーヤーが社会に浸透し、今小さな子供たちが大人になるころにはどんな情報化社会になるのだろうか、すごく気になっていたので、いくつかコメントさせていただきました。もちろん、デジタル放送のデータ通信の話で、世界陸上の女子マラソンの放送を見たときの話をしたのですが、そのときにid:lionusさんが笑っていたのは見逃しませんでした(笑)


で、肝心な情報教育の危機的状況についてですが、研究会の帰り道にI先生のお弟子にあたるN先生とも話していたんですが、今の情報教育が何を目指しているかが問題ではないかなぁと思います。例えば、情報教育といえば、情報の科学的理解、情報活用能力や問題解決能力、情報化社会に参画する態度などの習得を目指しています。個人的には、こういう枠組み=教科で本当に良いのかなぁと思います。これからの社会では、多機能な機器、多様な情報がますます登場してくるでしょう。そして、それらを誰もが利用できる社会になるでしょう。そんなときに、科学的な理解をどこまで理解しないといけないのか?それよりも、より実践的な活用能力や参画する態度への経験を積ませることが重要ではないか?問題解決能力とは、どこまでを指すのか?こういうことを、教科教育にしろ能力教育にせよ、カリキュラム全体から慎重に検討しないといけないと思うのです。

私は教育系の学部の出身ではないし教職の免許も持っていませんが、教育には「○○力」や「○○性」を開発したり育成したり伸ばしたりすることが目的ではないかと思います。情報は、とりわけ、技能・態度・理解をバランスよく習得することが求められると思います。現実を情報技術の利用を見ると、インターネットばかりが注目されたり、特定のソフトの利用が重視されたりして、そのバランスが崩れているなぁと思わされます。どんな目的のために、情報技術や情報への知識をどのように組み合わせ、結果を導いたり生活を豊かにするか、それを経験させるのが情報教育ではないかな、と考えたりします。

I先生の発表を聞いていて、現実は本当に課題満載だなぁと痛感しました。同時に、現場にいる人間として共感もしました。とくに、情報の教員を育成する大学において、充分な教育や指導ができているのか、という指摘は耳の痛い話でした。これに限らず、指摘された問題点を解決するには、I先生ほどにはないしても、より高い意識が必要だなとも思いました。