学生と同じ目線で考えられるか、いま大学は試されているのかもしれない

大学関係者、とりわけ私立大学や地方大学、中小規模大学…とかけば旧帝大関係者以外なら、読んだことがある人が多いと思うのです。もう、一年ほど前に読んで吐いたんですが、先日あらためて読み返してみました。2004年に書かれた内容ですが、今現在の大学を取り巻く状況は良くも悪くもそれと変わっていないことを、認識させられました。

崖っぷち弱小大学物語 (中公新書ラクレ)

崖っぷち弱小大学物語 (中公新書ラクレ)

旧帝大を辞められたり定年退官されたりして、私立大学に来られて、学生だけでなく自分を取り巻く環境が大きく違うことに驚かれる、という話は一昔前はよくあった話ではないのでしょうか。最近は有名国立大といえども、独立行政法人化やいわゆる「ゆとり世代」の学生の入学など、変化・変革が求められています。そういう状況では、私立大学や地方大学は、それ以上の変化や変革をしていかないといけないのでしょうか?

本書は、そういう変貌していく大学自身やそれを取り巻く環境を背景に、次の4つ問いを視点に、これからの大学と大学における教育がどうあるべきかを、述べておられます。

  • 学生は大学に何を望むのか?
  • 教員にとって大事なのは教育か研究か?
  • 経営者や事務局(大学職員)にとって大学とは何か?
  • 学長(リーダー)の資格とは何か?

著者は、本書の中で大学教育の原点を考え直すべきで、実学に惑わされず教養豊かで実社会に適応できる学生を輩出するのが、大学と教員の役割であると述べています。そして、今の大学教員にとっての研究というのは、学生に対して学習をすることの重要さを見せる姿勢という意味で重要であり、それによって学生自身の学習意識を刺激するべきである。そして、最終的には、経営側も運営側(大学職員)も、教員も、大学というひとつの環境にいることを再認識し、そこにいる学生とともに共生していくことを考えていくべきであると、主張されています。
そして一番感銘したのは、大学で共生していくには、いわゆる「○○GP」に左右されずに、自分の大学ができるやり方で誠実に教育をしていくことが、その大学の特色という多様性を生み出すことができる、と述べている部分です。最近、自分が考えていることに非常に近いと感じました。