「個」の力が試される時代

日曜日のシンポジウムへの行き帰りの電車とちょっとした空き時間を使って、ようやく「ウェブ時代をゆく」を読み終えました。いくつかの章を読んだだけで満足して、ずっと鞄にいれたままでした。読んだあと、すごく損をしたと思いました。もっと早く全部読んでおけばよかったと。

ウェブ時代をゆく ─いかに働き、いかに学ぶか (ちくま新書)

ウェブ時代をゆく ─いかに働き、いかに学ぶか (ちくま新書)

梅田さん(id:umedamochio)の本は読みやすく、はっきりいえば序章と終章さえ読めば、この本のエッセンスは読み取ることができます。でも、エッセンスだけでは、本書のタイトルどおり「ウェブ時代をゆく」には駄目だと思います。個人的には、自分の仕事や環境、そして年齢のせいもあって、第六章と第七章はそれほど共感する部分はすくなかったのですが、それ以外の章はどれをとっても共感し、感心し、参考になりました。
インターネット、そしてウェブの進化によって開けた「あちら側」の世界。それが「こちら側」の現実世界にも影響を及ぼすようになった。こう着しているような「こちら側」と激しい進化をしている「あちら側」。どちらの世界に身を置くのか、または2つの世界をどう使い分けるか、2つの世界をどう行き来するか。それらはすべて、人それぞれ。「個」の積極的な選択しだいであり、同時に、その自由が「個」にあるという、ある種の時代の変わり目が今だと説かれているように思えました。

たぶん、著者の梅田さんは、対象読者を20代前半から30代前半に想定したのではないでしょうか。でも、教育に多少かかわっている立場の私からすると、大学生、それも大学入学生に読んでもらいたい本です。それは、もちろんこの本の中に生き残るための手段(オプティミズム、「高速道路」と「けもの道」、ロールモデル思考法)などが書かれているということもあります。それらは、大学での勉強や将来の進路に関係することでもありますから。でも、正直この本の内容をすんなり読み込める大学入学生はそう多くないでしょう。彼らの多くは、大人が想像するよりもっと、「あちら側」のしくみに無頓着ですから……だからこそ、「高速道路」か「けもの道」を選択する以前に、将来に向けてのモチベーション、つまり自分の「好き」を探し出し貫いて行動することの重要さを、本書から感じてもらいたいと思います。