NHKスペシャル「人事も経理も中国へ」を見て仕事とは何かを考える

たまたまチャンネルを変えたときにやっていただけだったんですが、吸い込まれるように最後まで見てしまいました。製造業だけでなく、今や、人事や経理部門の仕事も中国の企業にアウトソーシングされる時代に、日本もなりつつあるようです。

企業のコスト、とくに人件費については、中国にアウトソーシングすることで、例えば1/5まで削減できたりするそうです。これまでアウトソーシングは難しいと考えられてきた、人事や経理部門の仕事も、見直すことで多くの仕事をマニュアル化することができ、さらにネットワーク技術の進歩と中国・大連での優れた日本語教育によって、大連の企業にアウトソーシングできるようになる。まさにグローバル化の波が、ホワイトカラーといわれる業務にまで押し寄せてきている様子を、描いていました。

番組の中心となるのは、大手通販会社ニッセン。中国へのホワイトカラー業務のアウトソーシング化を推進するのに密着しています。番組では「同じ漢字文化圏であるため…」と説明していました。しかし、スキャナで取り込まれ画面に表示される、顧客からのメッセージの文章を、中国の方が上手くパソコンに入力・変換しているのは、すごいなぁと感心しました。ひらがな・カタカナもあるし、字が読みにくい場合もあるだろうに。

番組前半は、中国へのアウトソーシングの概要の話でした。後半では、人事、経理ときたアウトソーシング化が、「企業内なんでも屋」である総務部門にまで押し寄せる様子を映し出しています。最初はアウトソーシングに反対だった総務部門の中心人物が、中国から来た担当者の仕事を覚えることへの勤勉さとマジメさに感心し、その指導をしていくなかで、アウトソーシング化を受け入れていくようになっていきます。
そして、その流れの中でいくつか重要なことがありました。一つは、アウトソーシング化を推進する担当役員の総務の社員への言葉「中国にアウトソーシング化できるようになって、総務はこれから何をするや?ということですよ」「給料に見合った仕事を考えてもらわなあかん」。これは、アウトソーシング化しても退職させたりしない、という背景があるからです。しかし、実際にはアウトソーシング化によって、例えば経理部門では3人の退職者を出してしまいました。これまで上から仕事が降ってきたのに、いきなり「上から仕事が降ってくるとは思うな」というのは、経営側の理屈としてはわかるけど、それしかないんやな、とも思わされました。企業としての「体力=人材」は大丈夫なんかいな、とも思いました。
もう一つは、アウトソーシング化を受け入れられるようになった、総務部門の中心人物が新しい資格を取得したことです。アウトソーシング化に関わるようになり、自分がどうすれば会社に貢献できるか。その答えとして、個人情報保護に関する資格の勉強をはじめられて、無事取得されました。これは上に書いた、役員の言葉への答えのひとつだと思います。総務一筋20年以上勤められてきた方が、自分のキャリアプランを考え、行動に移す姿は、ある種の感動というか共感を感じました。

番組の最後には、タイトルが「人事も経理も中国へ」から「人事も経理総務も中国へ」と変わります。つまり、企業の中核部分もグローバル化されつつあるということです。そんな中で、日本人はどんな仕事をするのか、どのように仕事に向かわねばならないのか、そういう場へ人材を送り込む大学はどういう教育をしていかないといけないのかを、番組の最後に考えさせられました。