高校と大学での情報の授業(2)

上で書いたことをベースに、先日トラックバックしていただいた、神奈川県の高校の教員をされているkamuraさんの記事を読んでみます。もとは私の日記からトラックバックをさせていただき、元記事の続きとして書かれました。

背景としては、「教科『情報』大学入試フォーラム」に参加され、「他教科では測れない学力を『情報』の入試で測るのか?」という趣旨の質問をされたところ、パネラーの大学の先生方から「受験の選択肢の一つ」「数学が不得意でも情報なら得意な生徒にチャンス」「論理的思考力を測るのに最適」との回答を得たそうです。


で、この大学の先生方からの回答が、東京農工大学の報告書と違うとご指摘。引用の引用になりますが、該当部分を紹介します。

第一に、現在の入試科目(「英語」、「数学」、「物理」)だけでは、情報科学に適性のある学生を選抜することができないということである。この背景には、情報科学が旧来の自然科学とは異なる学問であるという事実がある。情報科学の特徴は、論理的モデルを構築する行為が大きな部分を占めている。自然科学でも、現象から数量的モデルを組み立てることにより研究が進められる。しかし、そのモデルから導かれる理論が現実に合わなければ、そのモデルは価値がない。つまり、自然が一番偉いのである。しかし、情報科学では、比較・検証する相手は自然界ではない。構築された論理的モデルが矛盾していないこと、効率的に運用できること、などが最も重要なのである。(中略)
もう一つ、情報科学の根幹をなす概念として、「プログラム」(その本質は、予め書かれていて時間と共に進行する手順)がある。これは旧来の自然科学にはなかった概念である。
このように、旧来の自然科学にない概念を重要視する情報科学が「情報」以外の入試科目で適性のある学生を選抜できるとは考えにくいことである。(中略)
第二に、入試を通じて「情報科学はどんな学問であるのか」を社会に情報発信することができるからである。(後略)

意訳すると、「情報科学においては、モデル化やシミュレーションという重要な要素があり、他教科とは異なる要素である。また、これらを下支えするプログラミングも大きく異なる要素であり、これらの要素の適性を見るには『情報』しかない」ということでしょうか。

これに対して、「自分たちの自然科学とは異なるという論理は、自分たちの中では矛盾はないのかもしれないが、他の学問領域と比べたら奇異に見えるのでは」とご指摘されています。


東京農工大の主張は、「第二に〜」のくだりと合わせて、個人的には、とても崇高かつ明快な理由だと思います。同時に、kamuraさんのおっしゃるように、適性を測るからといって何でも入試科目にすればいいわけでもないと思います。なぜなら、『情報』で有名な方々はそれを入試科目にして受験されてきたわけではないのですから。自然科学系の科目をベースにされてきた方が多いはず。私は、そこに矛盾を感じたりします。

「情報」は、日常生活の目に見えるところに密接で、ある意味わかりやすい科目だと思います。さらに、少し視点を変えたり、詳細に物事を見てみると、他学問の領域に入っていきます。この2点が、「情報」という科目の、学問領域としての難しさで多くの人の理解を得にくい理由ではないでしょうか。では解決策は、というと難しいんですよね、これが。