ファシリテーション・グラフィック

最近本屋へ行くと、いろんな「見える化」の本が並んでいます。ネットワーク科学も、可視化という点では、見えざる人同士のネットワークを明確にすることで何かの知見を得るという研究なわけです。今回読んだのは「ファシリテーション」(話し合いを円滑に進行させる技術)の可視化の本。「なーんだ、議論を『見える化』するわけでしょ」と思う方もいるかもしれませんが、それだけにとどまらないのが、「ファシリテーション・グラフィック」のすごいところだと、この本を読んで実感しました。

ファシリテーション・グラフィック」は、確かに議論を「見える化」する技術です。あくまでも「技術」ですから、訓練しだいで誰でもできるようになる、と本書には書かれています。そのため、本書では、作例をふんだんに掲載して、基礎から具体的な技術や考え方をひと通り網羅しています。もう、この本を読んだだけで、「よしっ、早速8色セットの水性マーカー勝っちゃうぞ」と思うくらい、丁寧かつわかりやすい説明で、やる気にさせてくれます。

しかし、本書を読めば、単に道具をそろえたり他人の作例を見ただけでは、不十分なことがわかります。本書を読んで、「こういう能力がいるなぁ」「鍛えないといけないぞ」と私が思ったのは、3つの能力。「議論を要約する」「議論をグループ化して整理する」「グループ同士を関係づける」。これらができなければ、描く技術を習得していても無駄でしょう。この3つの能力は、すごく大事だと思います。あと加えるとすれば、「型を使える」でしょうか。チャートやフレームワークなど、議論を整理したり加速させるツールを知っていれば、なお良いと思います。これら「3+1」の能力は、議論のプロセスを全員が共有し、全員の参加を促進するという、「ファシリテーション・グラフィック」の目的を達成するためには、欠かせない能力だと思います。
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