30年間と10年間のどちらがウェブ進化に関係があるのか?

年末年始に、新書を2冊読んでいたのですが、やっとこさ感想を書けるようになりました。結構時間が経っているので、結構忘れていたり(汗)

ウェブ人間論 (新潮新書)

ウェブ人間論 (新潮新書)

最初に読んだのはこちら。今やウェブ2.0エバンジェリストの梅田さんと芥川賞作家の平野さんの8時間×2階にも及ぶ対談の記録。テーマがあっちこっちに飛ぶので、正直読むのが大変でした(汗)ある程度構造化してほしかったな。
二人の背景の違いが明確に現れているなぁと感じながら読んでいきました。梅田さんはビジネス&テクノロジーの世界の人、平野さんは文学の世界の人ということで、梅田さんがウェブ世界のことをレクチャーしながら話が進むかと思いきや、ときに平野さんからの素朴な疑問・指摘がなかなか良かったです。とくに最後の章は良かったですね。ウェブ進化の先に、平野さんは「個人が社会に対して何ができるか」と考え、梅田さんは「変化する社会に人はどう生きるか」とまったく考えが違う。なのにとっても建設的な議論ができているように感じました。
日本でインターネットが広く利用されるようになってから約10年。ウェブ2.0と呼ばれるウェブ世界の進化が、我々日本人に何をもたらすのか。何か明るいものをもたらすのではと読んだ後に思わせてくれました。

こちらは、ボリュームたっぷりですが、読み応えありました。読みやすかったです。インターネットが生まれてから約30年間のネット世界とリアル社会のさまざまな衝突が描かれています。
とはいっても、著者の佐々木さんの思い入れが伺えるのは、前半のWinny事件の部分ですね。Winny開発者金子氏への佐々木さんのある種の期待、そして裁判でのある種の失望。一次情報源に取材しているので、事件の発端から裁判までがリアルに感じられました。P2Pというインターネットの理想を現実化したことで、著作権問題に代表される現実との衝突。さらに、アンティニーウィルスという、これまでの常識を超えた情報漏えいとプライバシー侵害。あまりにも重過ぎる実社会の被害とネット世界の理想との衝突が興味深かったです。
後半は、コンピュータやネットにまつわる、日本と諸外国の衝突。半導体戦争やらTRON問題やら、懐かしかったです。デジタル家電iPodの対比は面白かったですね。日本大丈夫か?という不安をあらためて抱いてしまいました(汗)

この2冊、対象とする時間の長さ、対象とする世界の範囲は異なっていると思います。しかし、どちらもウェブ2.0というネット世界の新しい変化によって、人・企業・国家がどのように変化するかという可能性について議論しています。示唆される方向は違うかもしれませんが、現時点ではどちらもまだ選択肢のひとつ。いろいろ考える材料にしたいと思います。